(国内商標出願、外国商標出願、外国商品の輸入に伴う商標問題の処理)
■ 国内商標出願
商標登録をすると、その商標を独占的に使用できることは、一般によく知られていますが、商標登録のメリットはそれだけではありません。商標ではないと思って使用していた文字や図形に対し、ある日突然商標権侵害の警告状が送られて来たらどうしますか。(1)使用を止める、(2)お金を払って使用させてもらう、(3)法的に争う、のいずれかを選択しなければなりませんが、いずれも相当な労力と費用を費やすことを覚悟しなければなりません。このような事態に巻き込まれないためにも、商標登録はしておくべきです。つまり、商標登録をしておけば、その文字や図形の使用に対し、他人から文句を言われないという保障を得ることもできるのです。
我国における商標の2大登録要件は、(1)自分の商標が他人の登録商標と似ていないこと(但し、商標が似ていても、使用対象となる商品(役務を含む。以下も同様。)が似ていなければ、この要件はクリアーしているものとして扱われます。)、(2)自分の商標が商品の目印となり得ることです。登録されなかった商標の約8割は、いずれかの要件を満たしていなかったためと言われています。
しかし、どういう場合に商標や商品が似ていないことになるのか、また、どういう場合に商標が商品の目印となるのかは、極めて難しい問題を含んでいます。
当所では、ご依頼をいただいたすべての出願に対し、(1)と(2)の要件を事前にチェックしていますので、登録可能性の高い商標だけを出願していただけます。もちろん、使用対象となる商品の表記についても、特許庁が認めている表記となっているか、また、お客様の業務に照らして、商品の指定に漏れがないかをチェックいたします。
しかし、このように細心の注意を払ってなされた出願でも、拒絶理由通知(出願人に出願を拒絶する理由を事前に知らせ、反論の機会を与えるための通知)や拒絶査定(出願を拒絶する行政処分)を受ける場合が間々あります。出願される商標には登録・不登録の限界上のものが多く、また、審査結果にも審査官により個人差があるからです。拒絶理由通知に不服がある場合には、意見書の提出が認められ、また、拒絶査定に不服がある場合には、審判の請求が認められています。
当所では、事前に意見書、審判請求書の草案をお見せし、十分ご納得をいただいた上で、意見書、審判請求書を作成し、提出しています。当所で提出をお勧めしたケースの約7割は、当初の審査官の判断を覆し登録となっています。
その他、他人の商標権をつぶしたい場合(不使用取消審判請求、無効審判請求、異議申立等)、他人の商標使用を止めさせたい場合(警告状送付、税関での輸入差止申立等)、他人の登録商標またはそれに類似する商標を使用したい場合(ライセンス契約の締結、権利不行使契約の締結等)、ご自分の商標権の権利関係に変更が生じた場合(表示変更登録申請、移転登録申請等)にも、お気軽にご用命下さい。
■ 外国商標出願
国内法人が自社商標を付して商品を輸出する場合(または自社のサービスマークを使用して外国で役務を提供する場合)には、相手国で発生している商標権を侵害しないように注意しなければなりません。商標権の侵害を回避する最も確実な方法は、相手国で事前に商標権を取得しておくことです。外国で商標権を取得するには、(1)相手国の特許庁に直接出願する方法、(2)相手国を指定して日本特許庁に国際出願(マドプロ出願)する方法、(3)相手国が加盟する国際機関に出願する方法があります。
当所では、出願内容、出願国名、出願国数、将来の事業計画等をお聞きした上で、権利取得の容易性・低廉性、権利管理の容易性等の観点から、ベストな出願方法を選定いたします。例えば、(2)は、すんなり登録になれば、極めてユーザーフレンドリーな制度ですが、受忍しなければならない以下のような欠点があります。
(a) 基礎商標(国内の登録商標または出願商標)との厳格な物理的同一が要求される。
このため、英文字とその読みであるカタカナからなる商標に基づいて、その英文字のみを国際出願することはできません。また、英文字のみの基礎商標であっても、その書体、大文字と小文字の別、太さ等が違えば、国際出願できません。従って、このような場合には、国際出願しょうとする商標と物理的に同一である商標を国内出願しておかなければなりません。
(b) 国際出願日から5年以内に基礎商標が消滅した場合には、国際登録も消滅する。
このため、国内で出願中の商標を基礎とする場合には、商標の登録性を十分調査しておく必要がありますが、それでも従属消滅の可能性は残ります。しかし、登録まで待っていれば、国際出願がそれだけ遅延してしまいます。判断の難しいところです。
(c) 国際登録の指定国への拡張の成否が通知されない。
指定国で商標を使用する場合には、国際登録がその国で最終的に認められたかどうかを確認する必要がありますが、一部の国(米国、英国等)を指定国とした場合を除いて、この情報が通知されることはありません。従って、指定国での商標使用は少なくとも国際登録日から1年半は待つ必要があります。もちろん、現地代理人(法律事務所)に拡張の成否を調査させることは可能ですが、相当な費用がかかります。
(d) 出願の分割ができない。
このため、指定商品の一部に暫定拒絶理由通知が発せられた場合には、該当する商品を削除せざるを得ません。なぜなら、分割せずに暫定拒絶理由通知を争うことは可能ですが、もし、主張が通らなければ、国際出願全体が拒絶になってしまうからです。
(e) 商品表記の不備を理由に暫定拒絶理由通知が発せられるおそれが高い。
各国特許庁への直接出願ならば、各国の要件に合わせ商品表記を調整できますが、国際出願の場合にはそれができないからです。
この他、外国での商標権取得の成否は、依頼する現地代理人よって大きく違いが出てきます。外国出願成功の決め手は、正に現地代理人の選定にあると言っても過言ではありません。当所では、これまでの豊富な経験に基づき、信頼できる代理人を厳選していますので、安心して出願していただけます。
尚、外国出願には、現地の公的費用、当所の手数料に加え、現地代理人の手数料が必要となります(国際出願の場合には現地代理人の出願手数料は不要です)。ご請求があれば、外国出願の費用をお見積りいたします。もちろん、商標出願の他、登録可能性の事前調査、ウオッチ、ライセンス、異議申立、各種審判事件にも対応いたしますので、こちらもお気軽にご相談・ご用命下さい。
(1)外国の商品を輸入販売する場合(外国のサービスを導入販売する場合を含む。以下も同様。)には、その商品に付された商標を我国で使用することになりますので、我国で設定されている商標権を侵害しないように注意しなければなりません。そのためには、輸入商品に付された商標につき、商標権を取得しておくことが最も確実な方法ですが、商標権の取得は、その商標の所有者である外国法人が行なうのが通常です。
そこで、外国の商品を輸入販売するに当たっては、その商品の商標につき、外国法人により商標権が取得されているかどうかを、先ずチェックする必要があります。チェックの結果、商標権が取得されていない場合には、外国法人に商標出願を依頼する必要がありますし、商標権が取得されていても、登録商標と輸入商品の商標が同一でない(類似であるが)場合や登録商標の指定商品と輸入商品が同一でない(類似であるが)場合等には、外国法人に新たな商標出願を依頼することが賢明でしょう。
加えて、輸入販売人(ディストリビューター)としての地位を安定的なものにするためには、その商標権につき、外国法人とライセンス契約(できたら専用使用権設定契約)を締結するのが賢明でしょう。
尚、外国の商品を輸入販売する場合であっても、その商品の生産者自身が既に商標権者となっている場合には、いわゆる真正商品の並行輸入となりますので、商標権侵害の問題は起こりません。たとえば、ネット販売業者がルイ・ヴィトンのバックを輸入販売しても、それが本物である限り、ルイ・ヴィトン社の商標権を侵害することにはなりません。
(2)輸入販売する商品の商標につき、商標権による手当てがなされていても、国内法人の意向により、その登録商標に自社の商標を付加して使用したい場合、その登録商標にその読みであるカタカナを付加して使用したい場合、また、その登録商標のロゴやデザインを変えて使用したい場合等があります。
これらの場合には、必ず外国法人からその同意を得なければなりませんが、登録商標の同一性を逸脱するような使用の場合(この判断には専門的な判断が必要となります)には、新たに商標権を取得しておく必要があります。その場合には、費用の負担、商標権の帰属、商標権の管理、登録商標(元商標を含む)の使用条件等につき、両者間で契約書を交わしておく必要があるでしょう。
(3)もちろん、上記(1)と(2)の場合において、常に商標登録が可能であるとは限りません。そのような場合には、商標登録に代わる商標の使用手段を講ずる必要があり(ライセンス契約、権利不行使契約等)、これが不可能な場合には、その商標の使用を断念しなければならない場合もあります。
(4)この他、外国法人が商標権の取得に消極的で、国内法人に商標権の取得を依頼してくる場合があります。この場合には、その商標登録が不正登録とならないよう、外国法人から商標登録の承諾書を得ておく必要があります。もっとも、日本でよく知られた外国商標については、国内法人名義では登録が認められない場合もあります。また、外国法人が商標権の管理に消極的な場合もあります(第三者による侵害行為の放置、更新手続の徒過等)。
上記のような場合おいて、外国法人またはその代理人と必要に応じ交渉し、問題解決にあたります。問題解決できない原因の多くは、商標制度そのものに対する相手方の意識の低さ、日本の商標制度に対する相手方の理解の低さにありますので、その辺を考慮して交渉いたします。必要に応じて、和文・英文の契約書も作成致します。状況をお聞かせ頂ければ、お見積りいたします。秘密は厳守いたします。